畑から   1

’02.4.26
 

このコーナーは、私が笠間クラインガルテンで毎週日曜日に行っている栽培講習会で感じた珍事(難問珍問など)を中心に取上げます。できる限り講習会での出来事を題材に、この時期の畑仕事をリアルタイムで提供しようと思います。クラインガルテンをご利用ではない方がご覧になると、話題の飛びや重複などがあり分からないこともあるかと思いますがご容赦ください。また、詳しく知りたい方には、このホームページ上でもQAしたいのですが、できれば是非、笠間クラインガルテンまでお運び下さい。

 申し遅れましたが、私、栽培指導を担当しかつ栽培クラブの代表の斎藤典保と申します。12年前に脱サラして有機農業を(現行のJAS法に照らすと正しくありません。)を始めた者です。専門や経緯は追々お話することとして、早速始めましょう。

 どんなことにも向き不向きがあります。またその向き不向きは、向きから見ると面白いほどよく分かるものです。また不向きとはたいていの場合それに気づいていないのもで、それがさらに面白い。私は百姓の生まれではないので、その実同様の不向きを演じているのかもしれません。でも春になると家庭菜園では、私には理解できないオモシロイ光景がたくさん見られるのです。 

 まず、おそらく小学一年生の“あさがお”の時からずっと引きずっているのでしょう。家庭菜園には如露(ジョロもしくはジョウロ)を手にした大人が必ずいます。いいえほとんどの方が持っていると言っても過言ではない。ではなぜ種を蒔いたら水を撒くのか考えたことがあるのだろうか? または、広大な畑を管理する農家たちが如露で水を撒いている姿を目にしたことがあるのだろうか?例外はあるだろうが、この春にカブや大根を蒔いた農家は絶対に水を撒いてはいない。さらにまた、こんな例をあげよう。食べ残しのジャガイモが、台所の隅で芽を出している。これは誰かが水を撒いているわけではない。でも芽が出ているのはなぜなのか。こんなことからまず考えてほしい。

 私の行う栽培講習会は、いつもこんなふうに始まります。不得手なことを短期間にマスターするには、教科書どおりに行うのが一番。加えて“なぜ”と考えることが必要だと思っています。そして、必ず自らやってみること。野菜つくりの学問にも立派な理論がたくさんあります。その反対側に経験が主である農家がいます。残念なことにその間をつなぐところは少ないのです。笠間クラインガルテンは、この橋渡しの一つと考えています。

 本題に戻ります。上述の水撒きの件、特別な(カラ梅雨時の種蒔きや傾斜地の上部で乾燥が著しい)場合を除き、水は撒きません。苗を植える場合は、苗に水を撒き、畑には撒かないのです。理由は簡単で、撒かなくでも大丈夫だからです。仮に撒いたらどうなるのかというと、雑草がよく生えてくるのです。実はこの水撒き、大変に難しい作業であります。多くの方が合格点を取れません。おそらく表現がまずいのでしょう。水は“撒く”のではなくて、“しみ込ませる”のです。これが実に難しい。ちょっとだけ説明します。野菜の苗に水を撒いたのち畑に植える時、皆さんはどうしますか。上から如露で水をかけても、実際にはポットの中の土の芯までしみ込まないものです。試しに水撒き後、苗をポットごとバケツの水に入れると、簡単に浮き上がります。つまりしみ込んでいないのです。水道(みずみち)といって、どこか一箇所がしみ込み穴になって流れ落ちそこ以外は濡れないのです。それではだめなのです。しっかりとポットの土に給水させるには、はじめからポットの下穴からしみ込ませるのです。このとき、必ず上からも水をかける人がいます。こういう人はアホですね。ストローの上を指で抑えて、ジュースに突っ込んでいるのと同じです。上の空気の抜け道を泥水でふさいだら、いつまでたっても水は吸い上がりません。

さあ、これでいいのかというと、このままではすぐ植えられません。23時間水を切らないとポットをはずした途端に土が崩れ落ちるのです。

 さらに、蛇足。水を撒くなら夕方。真っ昼間では、蒸発するだけ。また、夏の暑いとき、リールに巻かれた長いホースで水を撒くと、水の出し始めは熱湯ですのでご注意ください。

野菜に口があったら、大声を出すでしょう。