---------------Monthly Kleingarten Nougakujuku News---------------

=======2004.3.1 最終号=========

 

CONTENTS
■畑の露地裏
■野菜自慢
■野のグルメ
窯元探訪
■Monthlyインタビュー〜〜そして私は憧れのクラインガルテナーに〜〜

  ■畑の露地裏  
  畑の露地裏 N
栽培指導員の夢 ―― 田舎と都会を結ぶITの糸

 中学生になる息子はモノ作りが好きだ。小さかった頃のオモチャを分解しては部品を集め、新しい作品を創っている。親バカかもしれないが、熱心でいて結構上手だ。新作のアイデアはどこから来るのかというと、ちゃんとネタの出所があった。私の子供の頃と比べて、今の科学雑誌の付録は実に充実しているのだ。
 そんな息子の愛読書の中に、米村傳次郎という人物がよく出てくる。肩書きを見ると「サイエンスプロデューサー」とある。詳しい経歴を存じ上げなくて申し訳ないが、雑誌の内容は、科学的な事象のエッセンスだけを上手に切り出してその原理を説明してある。その解説をより正確に理解できるように作られている付録が実にユニークで面白い。それゆえ「サイエンスプロデューサー」なのだろう。
 この人を見て、私の考える食農・食育運動はこのように展開すべきだとひらめいたのである。
 農業の実際は、野菜作りではなく土作りである。いかに永続的に畑(土)を使い続けられるように管理するかである。しかし、入門者には難しすぎることなので、ひとまず傍らに置いておき、プランターで、それぞれの作物の栽培上のエッセンスを説明できるシステムを作ることができたら、私も素晴らしい先生になれるかもしれない。
 農業の話がいつのまにか付録との付き合いのようになって妙だが、今のIT時代ならあながち不可能なことではないような気がする。携帯電話で写真がやり取りできるからだ。さしずめ私の肩書きは「菜園'S プロデューサー」としようか。
 主に週末利用のガルテナー向けに3年続けた栽培指導で得たものがある。対象作物を限定すれば、前述のような栽培管理システムの構築も結構可能ではないかと考えるに至ったことである。
 今思うとこの3年間は、畑管理と作物栽培の両方を同時に指導してきたわけだから(えてして現場とはそんなものであるが、)よくガルテナーたちはついてきてくれたものだと思う。皆が素人だったことが幸いしたのか、はたまた私の指導が神がかりだった(苦笑)のか正確にはわからない。いま何も知らない外部の方が、ラウベの畑をご覧になったら、実に素晴らしい経験者達に違いないと感嘆するであろう。
 さて、冬の暇なときは、私の夢を考えるときである。ここで一つ、聞いていただきたい。世の中の変化は大変なもので、特に便利さを追求することに関しては目を見張るものがある。時代を追いかけることには興味のない私も、知らないと困ってしまうことがある。今、私が気になっているモノはITだ。幸い、世の中も追い風が吹いている。田舎からでも十分に情報発信ができるのなら、一つ私もやってみたいことがある。それは、都会のビルの屋上を畑にすることだ。
 東京では屋上の緑化対策に関心が高いようだ。屋上を緑化することで、ビルの冷暖房費を軽減しようというのである。それに使用するための作物の苗を県内で生産している風景が、過日テレビで放映されていた。
 ただ残念なことに、従来から東京にあった緑ではない。屋上という特殊な環境に耐えるためだけのものだ。また、主たる目的が冷暖房費の軽減では、敷設された緑には何も興味がわかないのではないだろうか。
 私は、積極的に屋上に用事を作るために畑を作りたいのである。そして、屋上を新たなコミュニケーションの場にしたいと思うのだ。運営方法が変わるだけで、住宅でも商業施設でも同じことが可能だ。
 それら都市部の畑と笠間クラインガルテン栽培クラブをITで結ぶことができたら、どんなに素晴らしいことだろう。技術的な課題や受け手など、まだまだ夢物語であるが、クリスマスの頃に、競うように家々が豆電球で飾り付けられるのを見ると“次は屋上菜園コンテストの時代だ”と一人笑みを浮かべてしまう。
 さらに、ここ笠間には古くから焼き物の産業があり、さまざまな作風の陶芸家が活発に活動している。好きな作家の作品をレンタルして、自家製大豆で味噌を作り、好きな器に豆腐を盛り、喰ろうべき糧とする。こんな光景に興味がわくのは私だけだろうか!?
 ご承知のとおり、笠間クラインガルテンは公の施設なので、活動には制約がある。また、こんな夢が早々に叶うわけでもない。田舎の“菜園'Sプロデューサー”の儚い夢物語である。でも、いつか実現させたいものである。

[斎藤典保]

 

野菜自慢(訪問先 崎山高一さん)

●若きエース

 3年前の入村式で、ひときわ若さが目立ったのが崎山さん一家でした。定年前後の利用者が多い中、まだオムツをした子供さんを抱える崎山さんを見て、草取り仕事にアゴを出さないか心配でした。
 栽培講習会で野菜づくりの“いろは”を説明したあと、一番最初に作付け計画を考えられた方でもあります。奥様が私の袖を引っ張られ、申し訳なさそうに、また恥ずかしそうに、小声で「あの、これ……」と、畑の管理計画を記載した大学ノートを開いて説明されたことを思い出します。
 あれから3年。作付け計画を練るのが上手になりました。畑を見れば、手馴れたところがすぐ見て取れます。今回ご紹介するホウレンソウも、「空きのでたスペースに、余り種を、時期遅れで蒔いたもの」とか。でも天候は年によって違いますから、2月下旬になってもこんなにきれいなホウレンソウが取れました。
 これは“まぐれ”ではありません。崎山さんの畑では、他の野菜もしっかり収穫できています。遊び感覚(余裕)がもたらした副産物なのです。おそらく、畑管理については、ご本人が一番よく納得されていると思います。
 ご都合で今回卒業されるのが残念ですが、笠間クラインガルテンの若きエースです。

[訪問・文/斎藤典保]
■野のグルメ
   コンセプトは「菜園で採れた季節の野菜で、簡単料理」を基本に月ごとにメニューを提案してきました。
レシピはシンプルなので、料理を作る方の工夫次第で色々なアレンジが可能です。
 料理を盛る器は笠間焼の器を使用しています。

●黒ゴマの粥  4人

材 料 ごはん  1合
黒ごま   1合
緑豆  適量
タカキビ   適量
調味料    砂糖・塩  適量
作り方 1) ごはんと黒ゴマに適量の水を加えミキサーにかける。
※滑らかに仕上げるときは、裏ごしする。
2) 水で戻した緑豆とタカキビを加え、こがさないように火にかける。
3) 緑豆に火が通ったら砂糖と塩で好みに味付ける。

●ゴマ団子 30個

材 料 ジャガイモ  2個
あんこ  150g
黒ごま  適量
白ごま   適量
調味料    ショートニング  大さじ1
ゴマ油   少々
作り方 1) 皮を剥いたジャガイモを茹でて水を切ったら、ショートニングを入れて丁寧につぶす。
2) 1)を30等分する。
3) 市販のあんこにごま油を少々加え混ぜる。
4) 2)にあんこを入れ団子にしたら、ゴマをまぶして油で揚げる。

[斎藤典保]

・・・あとは試食。さあいただきまあーす・・・

 @ゴマ団子:生地はマッシュポテトで程良い甘さの餡を包みバージン・ゴマ油で揚げた味は舌の上で踊りながら心までもが豊かになり絶品に値する。
A黒ゴマ雑穀スープ:口の中はお歯黒一食になるがヘルシーなレシピで健康食品そのもので医学的にも検証してみたい。食しながら、白玉を入れたら視覚を楽しませ、更に美味しいのではと考えたのは邪道だろうか。・・・・・石井
 粥もゴマ団子も何時の日か食したことがあるような味でした。多分私の子供のときの甘いものがない時代の味でした。この素朴な味こそ懐かしい日本の昔を思い出させるものでした。・・・・・富田

窯元探訪
仲本律子氏

 福原にある仲本律子さんの工房を訪ねました。9年前に笠間に工房を持ったそうですが、それまでの10年あまりを東京都内、また多摩地区などで修行を重ねられ、いよいよ自身の工房をと東京近郊で場所を物色して、現在の場所に巡り会ったそうです。
 ただいま建設中というギャラリーの前に作品を並べて待っていてくれました。器だけでなくオブジェ風の作品もあり、多彩な作風に楽しくなりました。工房を見学させてもらい、自宅のゆったりとしたリビングでお話をうかがいました。
 陶芸の話はもとより、ご家族の話や地域との関わりについてのことなど、興味深いお話をうかがい、仲本さんの人柄にすっかり引き込まれてしまいました。
 特に印象に残ったお話で、作品作りに行き詰まったときには、グーッと身体の中に盛り上がる制作意欲が起きるまで待つということでした。また器ばかり作っていると飽きてしまうので、オブジェなどを作り、気分転換を図っているそうです。このお話をうかがって、多彩な作風の数々の理由がわかったような気がしました。
 リビングの所々にさりげなく置かれた作品や、調度の趣味にも人柄が現れている感じがして、気がつけば3時間あまりの時がすぎ、とても居心地のいい時間を過ごさせていただきました。

[野田康司]


【陶歴】
 笠間焼協同組合のホームページをご覧下さい。
http://www.kasamayaki.net/cgi-bin/artist/conf.cgi?ID=0032

Monthlyインタビュー
〜〜そして私は憧れのガルテナーに〜〜第8回
10人のメンバーが集まって
ラウベに一緒に泊まり
バーベキューを楽しむことも。

ガルテナー/国玉浩司・直子さん

多くのメンバーで農園生活を楽しみたい。
難しそうに見えるそんな夢を
見事に実現しているのが国玉さんたちです。
運営のコツとは? 大勢をまとめるための秘訣とは?
じっくりと伺ってみました。

Profile
くにたまひろし(51歳)・なおこ(49歳)。自宅は東京都目黒区。浩司さんはパトカー用回転灯などを製造するメーカーの現役社員。直子さんは保育園でパート勤務。夫婦で山歩きやスキーなどを楽しんでいる。

中学の父兄会の集まりから
すべては始まった


――クラインガルテンは1区画につき3組で登録するのが原則。笠間市の農政課は3組に限らず、どんどん積極的に利用してほしいと言っています。元々の理念が笠間市民と多くの都市住民が農を通じて交流を図るというものですから、そういう形が望まれるわけですが、実際には複数の組が一緒になって1区画を利用しているケースは少ない。そうした中で、国玉さんのところは多くのメンバーによるグループ利用を実現されています。成功の理由や運営のコツなどを伺いたいと思いますが、まず現在は何組で利用されているのでしょう?

浩司 9組です。最初は12〜13組で始めましたが、ちょっと減って今はその数に落ち着きました。経費もみんなで平等に負担していて、1組5万ずつを出し合っています。合計45万円が集まりますが、うち40万円がクラインガルテンの利用料となり、残り5万円が光熱費や雑費などの予備費になります。

――メンバーはどのようにして集まったのでしょう?

直子 それを話すと長くなるのよね(笑)。
浩司 ずっと溯らなきゃいけないからね。そもそもは、娘と息子が通っていた中学校の父兄の集まりから始まっているんです。10年以上前ですが、私らが住んでいる地域で、塾帰りの子が変な人に声をかけられるというケースが続いてね。みんなで何とかしようと、中学生の父親たちが集まって、夜回りをすることになったんですよ。巡回パトロールですね。その集まりを「父親の会」と称していましたが、この組織で生まれた交流をずっと続けようということになって。
直子 子どもが中学を卒業したらそれで終わりというんじゃ、もったいないと。それで、「父親の会」のOBがメンバーとなる「ひまわりの会」という組織をつくったわけですね。

――昔ならいざ知らず、共同体という意識がどんどん失われつつある今の時代に、そうした地域のつながりを求めるというのは珍しいですね。

直子 そうかもしれません。今、中学生の子を持っていて「父親の会」に入る、という人は少なくなっていると聞きますしね。
浩司 でも、僕らの「ひまわりの会」はずっといい形で続いているんです。山登りや野球大会を企画したり、新年会や忘年会を開いてみんなで騒いだりね。そんな活動を報告する『ひまわり通信』という新聞も、みんなで協力して月に1度発行しているんですよ。

インターネット上に掲示板を設けて
メンバー同士がスケジュールを調整


――そんなメンバーの方たちが畑に興味を持って、一緒にやろうよとなったのでしょうか。

直子 クラインガルテンを知るかなり前から、「ひまわりの会」で八ヶ岳山麓の長坂に畑を借りていたんですよ。宿泊施設はなく日帰りで行くのが基本だったから、そうこまめには畑の手入れはできませんでしたけど。15〜16人のメンバーが通っていたのかな。
浩司 だから、植えるのもサツマイモとかジャガイモとか、あんまり手のかからないものばかりで。でも楽しかったんですよ。自分たちで植えて育てて、それを収穫するという喜びを実体験できたわけだから。中学校の給食の残飯からつくる肥料を、クルマで運んで畑に撒いたりもして。有機農業的な取り組みもしていたわけですね。
直子 そんな風にして、畑はいいなぁとみんなが実感していたところ、クラインガルテンの話を聞いたので、これはもう是非にと思ってメンバーがすぐに集まって応募、こちらの住人となることができたんです。

――メンバーの方々の年齢や職業などは?

浩司 私は51歳で最年少。みんな50〜60代で一番上が68歳かな。職業は測量士、造園業、弁護士、電器屋〜〜と多種多様。ハッピーリタイヤ組も半分います。趣味の方もそれぞれ多彩でね。絵を描く人、山が好きな人がいれば、うどん打ちの名人、蕎麦打ちの達人もいます。だから、何回宴会をやっても話題は尽きない。話していると互いに勉強になることも多くて、本当に面白いですよ。

――しかし、9組もいると、それぞれのスケジュール調整で苦労されるのでは?

浩司 それが、そうでもないんです。インターネット上に私たちだけが利用できる掲示板をつくって置いているんですよ。日程の調整は全部そこでやります。「私たちはこの日に行く予定です」と書き込んでおくと、他の人は「じゃあ、ウチはこの週末に行こう」と。そうやって互いが自然に調整しているわけです。わりとスムーズにいっていますよ。

――そうして、ぶつかるのを上手に避けていると。

浩司 ただ、いつも避けているわけじゃなくて、時々はみんなが集まる機会を積極的につくります。主に私が企画しますが、イモの収穫や草取りを一緒にやろうと呼びかけるわけです。もちろんバーベキューとセットでね。けっこう盛り上がりますよ。

最年少がリーダー役を務めるから
運営が上手くいっているのかも?


どのくらいの方が集まるんですか?

浩司 10人くらいになる時もよくありますよ。そういう時は人海戦術で午前中にバーッと草取りを済ませてしまって、午後からたっぷりバーベキューの時間を取ってね。大勢の仲間とワイワイやるのは最高です。
直子 その10人がみんなで泊まることもあるんですよ。布団は10組くらい揃っているしね。上のロフトと下の床にズラリと布団を並べて敷いて。まぁ、半分はごろ寝みたいなもんですけど。みんな山歩きなどが好きで山小屋によく泊まったりしているから、そういう寝方に慣れてもいますしね。

――ただ、互いが遠慮し合うような関係では、気軽に一緒に泊まることなどはできないはず。元々のつながりが強いから、それが可能になるのでしょうか?

浩司 それはあります。僕らの場合は、信頼関係ができちゃっているのでね。やはりそのようなベースがないと、互いが密につき合い、友好関係を長く維持するのは難しいかもしれませんね。

――何をどこに植えるかなどで、もめたりはしないんですか?

浩司 その辺りの判断は、ある程度、僕に任せてもらっているんですよ。リーダー的な役割を僕が務めるということでね。全員の意見をすべて吸い上げた上で決めるとなると、なかなか前へ進まないんです。だから、ここにトマトを植えようとか、この日にバーベキューをやろうとか、そういう企画や提案は僕が掲示板に書き込んでやることにしているんです。それに対して意見をもらったら調整するというやり方ですね。大勢で利用する場合には、それが上手く運営するためのコツと言えるかもしれません。

――しかし、浩司さんはグループの中で最年少とおっしゃっていましたが……。

浩司 かえってそれがよかったのかな。一番年下だから、僕は皆さんに対してそれなりに気を遣いながら、提案などをしていくでしょ? 仲間の皆さんの方も僕に対して「一番若い彼が頑張ってくれているから、まぁ任せておこう」と思ってくれるみたいで。
 まぁ、そんなわけで、今まで上手くやってきましたので、これからも続けていきたいなと思います。
直子 仲間の皆さんと目一杯楽しみながら、野菜づくりにももっともっと精を出したいですね。

[インタビュー・構成/浜崎智博]

この日はお二人だけでくつろいでいた国玉さんご夫妻

春の訪れが待ち遠しい国玉農園

入り口のオブジェは麦わら帽子


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■発行人:斎藤典保 、石井敬造■編集長:斎藤典保
■編集:有野真由美、駒井延行、浜崎智博、林喜代子、富田正義
■通信員:野田康司
■発行:笠間クラインガルテン栽培クラブ
■協力:笠間市農政課

●記事に関するお問い合わせ: nougakujuku@michi-m.co.jp
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