畑から(畑の露地裏)   9

’03.02.01
 

 テレビをつけると“引越し”や“お雛様”さらに“ランドセル”のコマーシャル。もうすぐ春です。季節を感じる手立てはいろいろですが、近頃はこれが一番よく伝わる気がします。趣がなくて申し訳ない。ただ本来なら、それぞれの地域にその季節を知らせる生物暦や言い伝えがあります。そんなことを調べる事も地域を知る上では楽しいことでしょう。

 さて、2月の農作業。春だ春だとさわいでもまだまだ寒い。露地栽培では、来月まで仕事はありません。そこで、少しばかり農作業を体系的にまとめてみましょう。

私は畑の仕事の1年間を、大きく次のように分類します。

@、施肥、耕運
A、中間管理
B、収穫
C、後片付け
D、草取り
E、苗つくり

栽培内容によっては重複する事柄があります。
この作業は、ローテーションですからどこから説明してもいいわけですが、便宜的に季節にあわせて@からはじめましょう。

まず、

@: 肥料のこと。その中身については後に譲ります。ここではとにかく肥料を畑に入れたとします。それを土になじませるため道具を使って撹拌します。
A: 中間管理とは。蒔いたり植えたりした野菜を、間引いたり覆いを掛けたり外したり、支柱を立てたりヒモで縛ったり、土を寄せたりという作業。
B: 収穫そのもの。ただし、キャベツのように一度取ったら終わりになるものと、果菜(ナスやキュウリのように実をつけるもの)のように生長させながら収穫を続けるものとあります。この間に、摘果や受粉の手助けをする場合があります。また秋のサトイモのように、掘り取って終わりとせず長期間保存するために穴に収納する場合などは、作業を一日で終了させるために準備や段取りを考えておきます。何のことかというと、季節は初冬、掘った芋をその日のうちに保管しないと霜に当ててだめにしてしまいます。
C: これらはABの裏返し。さらに大きく生長した植物残も処分する。そのための場所や方法を考えておきます。植物残は一度に出るので、畑が小さい場合は特に工夫が必要です。
D: ここ笠間市では4月から10月くらいまで、土のあるところには草が生えます。掃除をしていない我トラックでは、荷台からも生えています。春から夏の草と秋から冬の草に分けて対策を考えます。
E: 多くの家庭菜園愛好者には関係ありません。苗つくりのことです。業界では、「苗半作」。作物によっては「苗7分作」といいますから、キュウリの苗を買ってきて畑にポンと植えたら1 本取れたというのは、あまり関心できる仕事とはいえませんネ。笠間クラインガルテンの利用者で興味をお持ちの方には、積極的にこの苗つくりを教えるのですが、“これは上手だ“いう方はまだいらっしゃらない。ホッと胸をなでおろしています。何故って、そんな名人がいたしたら、私の立場がないからです。


 この流れ中@とAの間に播種(はしゅ;種蒔きのこと)や定植(苗を植えること)が入ります。では、この話を聞いてすぐに畑仕事にとりかかれるかというと、これがそう簡単ではありません。これはあくまで大まかな流れだけです。その土地や季節、栽培するものの組み合せや前作物などなど、検討事項はたくさんあります。講習会では、一通りこの話を終え、「わかりましたか?」と尋ねると、「ハイ。」とうなずかれる方がいらっしゃいますが、1時間やそこらでコツがわかったら、名人はいなくなります。
 ここから先は各論になります。つねに大まかな一年の流れを頭に入れてください。「何故それを行うのか。」「どちらが優先か。」といったことを天秤にかけるためです。

 特別に、この2月に作業を行います。環境にやさしい農業を行う上で、あまり過剰な資材の利用を避けていますが、前述の苗つくりやトマトの雨よけ栽培用に簡易のビニールハウスを持つ方がいます。その中で一年間基本を行われた方には、一つご褒美を出します。トマトの苗を定植する5月中旬までの間に収穫する早生の大根栽培を行います。これは植物の特性を理解する上で、また季節や作業の段取りを考える上で、格好の教材となります。このお話、機会を改めて。