畑から(畑の露地裏)   7

’02.12.01
 

 冬の畑が好きだ。夕暮れの畑だ。ピンと張った空気が好きだ。カラスがねぐらへ帰る空だ。
 特に作業のなくなった12月の畑は、閑散としてはいるものの、しっかりと身構えていて、これから冬を越す覚悟を感じる。そんな中に立つことが私は好きだ。
 ここ笠間クラインガルテンも、2回目の冬を迎える。畑の隅には、まだ夏のなごりの野菜くずが見受けられ、小春日和には季節を間違えるほどだが、小高いラウベの畑から夕暮れの空に横にたなびく野火の白い煙を眺めると、その季節を間違えることはない。
 冒頭お断りをいたします。私は文学中年ではありません。この現象のことを、気象学では「逆転層」といいます。ここから南に見える筑波山の中腹でミカンが採れるのはこのためです。つまり、日中暖められた空気が上昇し、日が暮れると山の麓より少し高度の高いところの方に暖かさが集まります。
 さて、この「露地裏コーナー」では、毎週日曜日の朝9時からガルテナーと行っている栽培講習会のなかから話題を抜粋して提供いたします。講習会では、その週の畑仕事と、一般的な栽培上の質問をディスカッションしていますので、「路地裏」ではなく「露地裏」としました。これらは、広く家庭菜園の愛好者にも参考になる話題を集めていきたいと考えています。ただし、あまり技術的なことばかりでは面白みがありませんから、私流にアレンジもいたします。
 そこで、冬の暖かさについて一つ。家庭菜園と農業の違いの一つに、収穫方法の違いがあります。ここでいう方法とは技術のことではなく、利用面から考えた管理方法のことです。つまり、営業の農業では、野菜が一番高く取引できる時に一斉に収穫できるようにと考えます。一方、家庭菜園では、手間を少なくして長い期間収穫しつづけられることが重要になります。そこで、寒さ(特に霜)の害から野菜を守るために、「不織布(ふしょくふ)」という資材を使います。たとえば、1畝のホウレンソウの半分だけをこれで覆うと、覆っていないところより生育が早くなります。つまり、収穫期にずれが生じて利用期間が長くなるのです。ただし、なんでもかんでも“やれば”よいわけではありません。すでに大きく生育したものを早いうちからこれで覆うと、花が咲いたり、かえって伸びすぎて寒さに負けたりします。使用にあたっては、生育具合と気候と自分のお腹に相談なさってください。
 わからない方は、ぜひ、日曜日の笠間クラインガルテン栽培講習会に参加されることをお勧めいたします。傍聴は無料です。私のほかにも多数、師範代(自称)がお待ちいたしております。