畑から(畑の露地裏)   bP8

 

畑の露地裏 初冬

 四季の中で一番好きな季節がやって来た。田畑をわたる風がひんやりとして、夕暮れにピンと張った空気の中に立つのが好きだ。たなびく野火の白い煙がなんとも物悲しい。それでいて何故か身が引き締まるようで……。
 皆さんはお気づきだろうか? 畑を作っていると、収穫物がいちばんにぎやかになる季節がある。6月下旬と10月下旬である。おそらく皆さんの畑も、今が最高のときではないだろうか。
 何年百姓をやっていても、作が出来るときはうれしい。まして夏がパッとしなかった今年など、それなりに収穫物があることにほっとしている。
 あまり尻を叩くのは気が引けるが、この1週間で秋と冬が切り替わるので、寒さに当ててはいけないサツマイモやサトイモはきちんと片付けていただきたい。しまうなり、食べるなり、お裾分けするなり、その日のうちに行っていただきたい。なぜなら、仕事を1日の途中で中断するとせっかく作った芋が寒さにあたる心配があるからだ。おまけにこれからの季節は日がどんどん短くなるので、こうした作業は計画的に行わなくてはならない。
 貯蔵物を片付け、豆をまき終わったらひとまず冬の準備が完了だ。そして私もほっと一息つく。
 ここ笠間では、麦を作らない場合、野菜づくりの1年は収穫作業を残して10月で終わりである。ガルテナーの皆さんはこの1年をどのように振り返られるだろうか?
 この事業が始まって3年たつが、今年の天候は決してよいものではなかった。野菜づくりの厳しい一面である。これが工業製品と決定的に異なるところだといってもよいだろう。これを仕事として選ぶには厳しいことが、おわかりいただけるのではないかと思う。もっとも、楽な商売などどこにもないだろうが……。
 残念ながら、食べ物はつくりだめや食いだめができない。これは野菜づくりだからまだよいが、相手が動物であれば、さらに大変になる。人間中心の生活のリズムが成り立たないのだから……。知り合いの酪農家いわく、「野菜づくりが年中無休なら、酪農は生涯無休である」と。
 悪天候に備え、さまざまな手立てを講じるのがプロとはいえ、どうにもならないことだってある。天候に恵まれない年もあるということを、また、そもそも食べ物とは自然条件に左右されるものであるということを理解していただきたい。いや、多少なりとも感じていただけるだけでも価値があると思うのである。


[斎藤典保]