畑から(畑の露地裏)   bP7

 

畑の露地裏 J 佳境

 9月に入ってから、冷夏のツケを返すかのように日差しが戻ってきました。夏と秋で気温がこれほど変化すると、季節感もずいぶんとおかしくなります。おかしくなるのは野菜も同じで、そろそろ片付けようかと思っていたナスやトマトは指導員の助言に反してみずみずしい実を成り戻らせます。またその変化は虫の世界も同じようで、8月の間も飛び続けていたモンシロチョウはぱたりと姿をひそめ、出番を待っていたかのように夜盗虫が夜の闇を徘徊しています。特に、季節を間違えて植えたブロッコリーやカリフラワーに寄って集っています。時には、普通食べることのないレタスにまで食害が見受けられます。これだけ一気に蔓延すると、無防備なネギなどが犠牲になります。夜盗虫が厄介なのは、食害のパターンが下品だからです。たとえ害虫といってもお行儀よくひとつの野菜を残さず最後まで食べるのでしたら誉めてあげたいのですが、夜盗虫ときたら、いきなりキャベツのドテッ腹から内部に穴をあけて入り込みます。なんとも見た目の悪い素行ですよね。おまけに、キャベツでもブロッコリーでも中に隠れていますから捕虫することが出来ないのです。これはネギについても同じことです。葉を破いて捕まえなければなりません。
 勉強が苦手な私は、ものの本をひも解くとページがバラバラになって往生しましたが、読者の皆さんはそのようなことはないでしょうから、一度本屋さんでひも解いてください。野菜の病虫害の典型的な症例が掲載されている写真です。実際には、なかなかそのような典型的な症例は見つかるものではありません。ところが、こういう年はご注意ください。典型的な被害を受ける場合があります。私も以前、結球間近のキャベツが2日間でヤブレ笠になった例を知っています。葉脈の太いところしか残っていない状態でした。そのときは、夜畑へ行くと地面のそこかしこに夜盗虫が這いまわり、様子を伺っている自分の足にまで這い上がるありさまでした。耳を澄ませば、何やらカイコ棚の桑の葉が食べられるような音が聞こえました。もちろん夜盗虫が緑の葉を食い尽くす音です。
 種蒔きに苗の定植、それから早いものは秋野菜の収穫。またそれに伴う害虫対策と9月の畑では農夫はいつも駆け足です。多くの方は、夏の暑さが過ぎて仕事がはかどるのでしょうが、私は春2月から休みなしに走ってきた8ヶ月に疲れが出ます。それでもこの佳境を過ぎれば、あれこれ考えていた次の仕事に手が付けられます。反省や夢を一歩進められる時がやって来るのです。
 さて、佳境の畑仕事に一つアドバイスをします。秋冬野菜は、夏野菜に比べ多くの面積が必要です。ですから、空いている場所を有効にお使いください。土作りの観点からあまり奨励するものではありませんが、小松菜やホウレンソウなど葉物野菜の余りタネを時期はずれに蒔いてみてください。時に大収穫する場合があります。土作りの堆肥などは秋作の収穫後に投入し、緑肥は夏の畑使用面積が少ないときに計画的に栽培しましょう。
 さあ、もう一頑張り。草取りも間引きもないゆったりとした田舎暮らしを楽しめる秋の夜長、あなたは、何をして楽しむのでしょうか?


[斎藤典保]