畑から(畑の露地裏)   bP3

 

畑の路地裏 F 

「あ〜、見つかっちゃいました!」
 子どもが後ろ手に物を隠すようなかっこうから、バツの悪さが伝わってきます。
 4月に新しく入った人はたいてい、夢にあふれているもの。こちらがまだ遅霜の心配をしているのをよそに、連休前にはもう、早々とメロンやスイカを植えています。「まだ無理ですよ」と、講習の中でいくら注意しておいても、こういう人が必ずいるのです。気持ちだけが先走っているのでしょう。向こう見ずといえばいいのか、ハラハラさせられたり苦笑させられたりします。

 クラインガルテン3年目ともなると、さすがに誰もそんなことはしません。「苗半作」といわれるように、野菜作りの全工程には苗作りが大きなウエイトを占めます。そういうことが経験的に理解できるようになると、身のほど知らずなことはしなくなるのです。
 とくにメロンは、苗から作ったって難しいのに、種から作るなど無謀です。「プッ」と吐き捨てた種を素人が植えて、千歳空港で7500円や9000円という値段で売られているようなメロンが穫れたら、静岡や夕張の農家はやっていられない。そんなことを頭では理解できるはずなのに、いざとなると夢の誘惑には勝てなくなります(もっともクラインガルテンは“夢を売るところ”ですから、多少は仕方ありませんね)。
 さて、5月末ともなると新入生の畑にもいろいろな苗が植えられ、畑らしくなってきました。しかし、畑の見栄えは、整理整頓もさることながら、適当な時期に適当な作業を行っているかどうかが決め手になります。その辺がわからない間は、どうも畑がしっくりまとまりません。

 畑は思うように作れないまでも、土地の利用法が理解できてきた人たちの畑は、なぜか整然として見えるものです。草取りの上手下手でもなく畝の歪みのことでもないのですが、どこか凛として見えます。今から梅雨明けまでに行う畑仕事が確実に準備できており、今年の年間計画がほぼ見えているのです。
 そんな農場主(?)に声をかけると、返ってくる言葉の中に、しっかりとした計画が見てとれます。そうなればもう、しめたもの。あとは、何もいうことはありません。今後は、当初の年間計画に少しずつバリエーションをもたせるなり、新たに生まれた余暇を別なことに使っていただければ、田舎暮らしがさらにおもしろくなるはずです。

 畑を上手に使いまわすコツは、はじめは少し余裕をもった栽培を行うことです。1つの畝にあれもこれもと、いろいろな種類の野菜が1本ずつ植えてあるなどというのは言語道断。そういう方は、園芸店を一回りすると、必ず1つ2つ、何かを手に持っていらっしゃる。もう一回りするとさらにもう1つ……という方です。はやる気持ちは理解できます。しかし、何事も計画が大事であります。

 これから入梅までは、畑仕事も一息つけるときです。あれこれ欲張らず、少し違った視点で田舎を眺める絶好の機会でもあります。季節も穏やかです。オクラやナスのアブラムシは無視して結構。あまり神経質にならずにいられる季節を大切にしてください。



[斎藤典保]