― 市松人形 ―

 目じりも目頭もまるびを帯びた小さな目。鼻も口もこづくりで愛らしい人形たちは、何かもの問いたげだ。思わず肌の美しさに触れたくなる。
誠太郎人形は抱き人形としての条件を完璧に備えている。古物商の許可をとり古着を集め人形の着物を縫うのは妻の良子さんである。
家業は料亭だったが十五歳から漆職人となり好きな山登りで遭難に会い、指に凍傷を負った。漆刷毛を持つのをやめ、出会ったのが市松人形
である。今は亡き市松人形の頭の生地をつくる生地師、小林岩四郎に会えたのが深澤誠太郎の市松人形誕生のきっかけだ。
現在長野県開田村に廃材を使って農家を改築したアトリエで市松人形の生地をつくっている。10年かかって改築した農家は現在民宿としても
つかっている。馬小屋はレンガを積み上げて音楽ホールになっている。